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ルディ

「あれ? これ、ジョシュアの財布じゃないか?」



ジョシュアが座っていたソファの上には、白いファーの付いた財布があった。

コンラートが持ちそうな財布には見えない。

レナードは、客人の忘れ物に慌てる。



レナード

「マジか!? どうしよう。今追いかけても、もうどこ行ったか分かんねぇな……そうだ! ルディ!」



レナードはアタシに言う。



レナード

「これ、ジョシュアに届けてくれないか?」


ルディ

「えぇ!? どこ行ったかも分からないのに!?」


レナード

「空から見たらすぐ分かるかもしれないだろ? ルディ、小悪魔だから飛べるし! な!頼むよ!」


ルディ

「ええー」


レナード

「届けてくれたら、今日の晩飯ここで食べていいから!」


ルディ

「!」



今日の飯代が浮く。

その交換条件に、アタシは財布を受け取る。



ルディ

「さっさと届けてやるよ!」


レナード

「ありがとう! よろしくなー!」



アタシは小悪魔の翼を広げて空へ飛び立つ。

まだ時間が経ってなかったから、ジョシュアはすぐに見つかった。



+++++



ルディ

「ジョシュアー!」


ジョシュア

「! ルディさん」



アタシはジョシュアの前に降り立つ。

そこで気付いた。



ルディ

「あれ? コンラートは?」


ジョシュア

「僕が財布を落としたから、探しに行ってもらってる」


ルディ

「うわー。コンラートのやつ、こき使われてやんの」



笑うアタシに、ジョシュアは言う。



ジョシュア

「まぁ、小悪魔がまともに頼まれごとをされてくれるとは思ってないよ。夕方までかかっていいって言ってあるから、今頃、のんびりこっそりお茶でもしてるんじゃないかな」


ルディ

「それじゃ頼んだ意味ないじゃん」


ジョシュア

「まぁ、落としたのはサブの財布だから、最悪出てこなくてもいい。それに、コンラートに関しては、荷物持ちの罰で同行させるのも、心苦しいと思ってたからね。これで彼も、ちょっとは旅行を楽しめてるといいんだけど」



このジョシュアってやつ。

コンラートのことを思いやっているのか。

世間から小悪魔は、しょうもない悪戯をするヤツとか言われて、見下されているというのに。

普通に、めちゃ良いやつじゃん。

アタシは感心してしまった。



ジョシュア

「それで? ルディさんは、僕に何か用?」


ルディ

「あぁ。これ」



アタシは財布を手渡す。

ジョシュアは、眉間にシワを寄せた表情を変えることなく、財布を受け取った。



ジョシュア

「ありがとう。そっか、雨の屋敷に置いてきてたんだ」


ルディ

「財布の中身には手を付けてないから、安心しな」


ジョシュア

「うん。小悪魔にそんなことはできないから、そこは安心してる」


ルディ

「むむお見通しだな」


ジョシュア

「君たちは分かりやすいからね」



まぁ、ともあれ。

ミッションクリアである。

これでアタシは今日の晩飯にありつけるというものだ。

ジョシュアは言った。



ジョシュア

「ところで、ルディさん。この後、時間ある?」


ルディ

「え? まぁ、晩飯まで暇だけど」


ジョシュア

「財布を届けてくれたお礼に、何か奢るよ」


ルディ

「マジ!?」


ジョシュア

700ベート以内だったら、なんでもいいよ」



700ベートあれば、お茶とケーキのセットくらい食べられるじゃないか!

最高か!



ルディ

「マジか〜!! どうしよっかなっ! 何食おうかなっ! 迷っちまうなぁっ!!」


ジョシュア

「あ、陸地の階の大通りにある最近できた人気のお店とかあったら、そこでもいいよ」


ルディ

「マジで!? 超太っ腹じゃーん! じゃあじゃあ!! 先月できたばっかの、超オシャレなカフェ行きたい! そこのカフェ限定の『チョコレートボックスパフェ』ってのがあるんだけどさ! 700ベートだったらちょうど食べられるんだよ! それ食べたい!」


ジョシュア

「いいよ。案内してもらっていい?」


ルディ

「もちろん!」



アタシはジョシュアを連れて、大通りを目指し、歩くのだった。



+++++



歩きながら。

ジョシュアはアタシに聞く。



ジョシュア

「ルディさん。あのモニュメントは何?」


ルディ

「あれは、陸地の階で有名な彫刻家が作った時計塔の像! アタシ、芸術はイマイチよく分からないんだけどさ、ああいうのって待ち合わせする時に役に立つよな」


ジョシュア

「あぁ。もしかして、陸地の階で有名な待ち合わせ場所『銀の時計塔前』ってやつ?」


ルディ

「そう、それ! よく知ってるな!」



ジョシュアは遠くにある建物を指差す。



ジョシュア

「あれは? あの一番背の高い建物」


ルディ

「あれは陸の塔っていうショッピングモールだよ。たしか50階建だっけな。展望台まであって、あそこからの景色はなかなかいいぞ!」


ジョシュア

「へぇ。あれがね。写真撮っておこう。ルディさん、撮ってもらっていい?」


ルディ

「オッケー」



ジョシュアは気難しい顔をそのままに、ピースをする。

アタシは陸の塔を背景にジョシュアを撮った。

目当てのカフェは、そのすぐ近くだった。



+++++



カフェに入って、注文をして。

待っている間、ジョシュアは言った。



ジョシュア

「ルディさんがガイドしてくれたおかげで、陸地の階の観光ができたよ。ありがとう」


ルディ

「ん? あぁ、そう? そんなつもりは無いんだけどな。ただカフェを目指して歩いてただけだし。まぁ、役に立ってるなら良かったよ」



ジョシュア

………ルディさん。僕にちゃっかり陸地の階の観光ガイドとして使われてたの、分かってない?」


ルディ

「え?? そうだったのか?」



キョトンとするアタシ。



店員

「おまたせしました。チョコレートボックスパフェです」



そんなアタシの前に、お目当てのパフェが運ばれてくる。

アタシは目を輝かせて、パフェを頬張った。



ルディ

「うんめ〜!」


ジョシュア

まぁ、ここのお茶代が、ガイド代だから、いいか」



ジョシュアはコーヒーを飲んでいた。



+++++



カフェから出たアタシたち。



ジョシュア

「ルディさん、今日はありがとうございました」


ルディ

「こちらこそ〜! はー、パフェ美味かった!」


ジョシュア

「提案なんだけど、ルディさん。明日も陸地の階のガイドをしてもらえないかな? 昼食、奢るんで」


ルディ

「お! いいよ!」



今日は晩飯を雨の屋敷で食べて、明日はジョシュアに昼食を奢ってもらえる!

なんかアタシ、ツイてるなぁ!

気分がいい!



ルディ

「なぁなぁ! アタシ、晩飯まで時間あるからさ! もうちょっとサービスしてやるよ!」


ジョシュア

「本当に?」


ルディ

「どっか行きたいとこある?」


ジョシュア

「うーん、陸地の階のオススメスポットとかあれば行きたいな」


ルディ

「オススメスポットねぇ!」



アタシは提案した。