【Aを選択】
アタシは、ギフトショップを指差した。
ルディ
「あそこに、ハンカチが売ってたよ」
コンラート
「ほう! では、あの店に行って、お揃いのハンカチを買ってしまいましょう!」
コンラートも、羞恥に耐えられないようで、早くデートを終えたいらしい。
アタシたちは店に入った。
+++++
カラフルで可愛いハンカチが多く並ぶ店内。
デートのことなど忘れて、アタシは感嘆の声を上げる。
ルディ
「可愛いのいっぱいあるな! この小鳥柄もいいし、こっちのはフルーツ柄か! どれにしよっかなぁ〜」
コンラート
「どれにする? 決まっているでしょう! コレですよ!」
コンラートは、デカデカとハートのプリントされたハンカチを見せつけた。
アタシはあまりのセンスのなさに呆れる。
ルディ
「コンラートさぁ…もうちょっとマシなやつ選びなよ」
コンラート
「んな!? 私とお揃いのハート柄のハンカチを買うんですよ!? 屈辱でしょう!?」
アタシは別のハート柄のハンカチを手に取る。
ルディ
「せめて、こっちの、小さいハートがさりげなく入ったハンカチにしようよ。どうせハート柄のを買うなら、アタシこっちがいいな」
コンラート
「なっ!? こんなハイセンスなハンカチがあったのですか! 盲点でした!」
メガネをクイッと上げるコンラート。
うっかり見落としていた、という意味で盲点なのだが…
コンラートはメガネをかけていても、何も見えていないようだ。
ルディ
「じゃあこれを買おっか!」
コンラート
「あぁそうだ。この店では、刺繍のサービスはありますか?」
ルディ
「あるけど…?」
コンラートはハンカチを2枚手にして、店員に言う。
コンラート
「すみません。このハンカチにそれぞれBeloved Rudy、Beloved Conrad、と刺繍してください」
Beloved。
それは「愛する人」と言う意味だ。
アタシはコンラートに聞いた。
ルディ
「コンラート? アタシがBeloved Rudyのハンカチ持ってても、なんか意味が違くない??」
コンラートのことだから、また頭の悪いことをカッコつけてやってしてしまったのだろう。
そう思ったが。
コンラートは自信満々に言う。
コンラート
「ふふふ。ルディはBeloved Conradのハンカチを持つのですよ」
ルディ
「へ??」
コンラート
「そして私はBeloved Rudyのハンカチを持つ! 愛する人の名前の入ったハンカチですよ? これで誰かに見られても、言い逃れできません! ふふふふ!! 完璧だ!! どうです? 屈辱でしょう!?」
ルディ
「へぇ…コンラートにしては、考えたじゃん」
珍しく頭のいいことをするコンラートに、アタシは素直に屈辱的な気分になる。
このハンカチは家のタンスの肥やし決定だ。
刺繍をしている最中に、お会計を済ませる。
コンラート
「ここは私が出しましょう」
ルディ
「いいのか?」
コンラート
「デートでの買い物ですので」
店員
「2500ベートになります」
コンラート
「………」
ルディ
「コンラート?」
コンラート
「ルディ、お金貸してください…」
アタシは吹き出して笑ってしまう。
ルディ
「カッコ悪い彼氏だな〜」
コンラート
「うぅ…」
ルディ
「でもそんなとこが、コンラートらしいよ」
コンラート
「!」
アタシは残りの金額、600ベートを払った。
+++++
ハンカチを受け取り、店を後にする。
再び手を繋いで、街を歩くアタシたち。
コンラートは何か考えているような顔で言った。
コンラート
「ルディ」
ルディ
「ん?」
コンラート
「カッコ悪い私を、私らしいと言いましたよね?」
ルディ
「あ〜。まぁね。でも気にするなよ! だってこれは、屈辱のデートだろ? コンラートがカッコよかったら、屈辱のデートになんねーじゃん」
コンラート
「それもそうですが…」
何か、コンラートは腑に落ちないらしい。
ルディ
「コンラート? どうしたんだよ?」
コンラート
「やっぱり、いくら屈辱のデートといえど、私がずっとカッコ悪いままでは嫌ですね。こんなカッコいい私と、付き合うことができない、という屈辱をルディに味わわせるのも一興というもの!」
ルディ
「お前…カッコいいこと、できるのか?」
コンラート
「できますとも! えーっと、たとえば…!!」
ルディ
「無理すんなって」
コンラート
「無理だなんて!! 嫌です! 私がカッコ悪いなんて!!」
コンラートは落ち込んでしまった。
アタシは言った。